「お祈りの時間は業務を抜けられると、フロントが回らなくなる」
「ラマダル(断食)中は水も飲まないなんて、倒れられたら困る」
イスラム教徒(ムスリム)のスタッフ採用において、最大のハードルは業務と宗教的習慣の両立です。しかし、これらの懸念の多くは「実態を知らない」ことからくる誤解です。
適切なルールと少しの配慮があれば、業務に支障をきたすことはありません。今回は、現場が混乱しないための運用ルールと、チームの納得感を高める方法を解説します。
1. 「お祈り」はたった10分。タバコ休憩と同じ感覚で

「お祈り=1時間くらいかかる」と思っていませんか? 礼拝(サラート)は1回あたり10分〜15分程度です。勤務時間と重なるのは通常2〜3回(昼・午後・日没)です。
| 運用のコツ | 具体的なルール化 |
|---|---|
| 休憩時間の分割 | 原則として「60分の休憩時間」を「15分×4回」に分割して取るスタイルを認めれば解決します。 |
| タイミングの調整 | 「チェックインのピークが終わってから行ってね」と事前に合意しておけば、大きな支障は出ません。 |
| 場所の確保 | 専用の部屋は不要です。空いている会議室や更衣室の隅など、人目がつかない場所があれば十分です。 |
2. ラマダン(断食月)は「日没」に配慮する

ラマダン期間中(約1ヶ月)、彼らは日の出から日没まで飲食を断ちます。最も配慮すべきは、断食明けの食事「イフタール」のタイミングです。
- 日没時の「5分休憩」: 日が沈んだ瞬間、彼らは水やデーツ(ナツメヤシ)を口にして断食を解きます。この瞬間に5分だけ裏で軽食をとることを許可してください。この配慮だけで、彼らは驚くほど元気に働けます。
- 味見のルール: 調理スタッフの場合、基本的には日本人スタッフが味見を代行する体制を組みます。
3. 日本人スタッフの「不公平感」をなくす魔法の言葉

「なぜ彼らだけ休憩が多いの?」という不満を防ぐには、「ギブ・アンド・テイク」を明確にすることです。
最強のメリット「年末年始」
「彼らにはクリスマスやお正月、お盆といった日本の行事は関係ありません。日本人が休みたがるその日に、彼らは喜んでシフトに入ってくれます」
この事実を伝えると、日本人スタッフの多くは「それならお祈りの時間は喜んでカバーします!」と協力的になります。
4. 採用時に「何ができて、何ができないか」を握る

宗教への向き合い方は個人差が大きいため、面接での確認が重要です。
- 「お祈りの時間は休憩時間内(分割)でも大丈夫ですか?」
- 「お酒のボトルをお客様へ運ぶことはできますか?」
- 「豚肉を使った料理を運ぶことはできますか?」
これらを「タブー」とせず、業務遂行上の確認として淡々と聞くことが、お互いの不幸なミスマッチを防ぎます。
まとめ:違いを認めれば、最強の補完関係になる
- お祈りは「休憩時間の分割」で対応し、業務に穴を開けない。
- ラマダン中は「日没直後の軽食」だけ許可する。
- 「日本人が休みたい日に働いてくれる戦力」であることを周知する。
多様な文化を持つスタッフが支え合うことで、24時間365日稼働する宿泊業のシフトは、より強固なものになります。互いの習慣を尊重し、無理のない「独自のルール」を作ってみませんか?



